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朝、一番好きな時間は、現実と夢の狭間をふらふらとさまよっているときだ。
目を閉じて夕べ見た夢の復習をしながら、鳥のさえずりに耳を貸している。
遠くでは波の音が聞こえている。
「そうか、粟島に来ているんだ。」
目はつぶっているけれど、カーテンの隙間から差し込む日差しが朝を告げているのがわかる。
「昨晩食べた石鯛の刺し身は最高だったな。ようし!今日はハナダイだ」
そう、今日は民宿の船にのってハナダイを釣りに行くのだ。
夢見心地ながらも、ふつふつと闘志が湧いてくる。
その時だった。
「トンチンカラリンチャンチャラチャン♪」
外でものすごい音楽が聞こえた。いや、これは音楽ではなく安眠を妨害するジャイアンの鼻歌だ。
夢の間を漂っていた僕は、あまりのやかましさについに飛び起き、窓を開けてみた。
白い4tほどのトラックが道に止まっている。
屋根についたスピーカからその爆音が響いていたのだ。
「なんだ、なんだこのトラックは!」
安眠妨害された僕は、恨みのこもった視線をトラックに投げつける。
すると付近の民宿から黒いビニールを持っ人々が次々とあらわれた。
ごみの収集車だったのだ。
この島はほとんどが民宿で、ごみが出ても集積しておく場所がないためトラックが
「ごみあつめにきたよーん」
という合図にその音を鳴らしていたのだった。
そうか、そうかと納得していると階下から民宿のおばちゃんが朝ご飯ができた事を教えてくれた。
隣にいるカミサンをみると、なんてこったい!まだ寝ている。
ごみ収集車の爆音を聞いてもびくともしないカミサンにつくずく感心してしまった。
半ボケ状態のカミサンを無理矢理おこし僕等は食事をとりに食堂に入っていった。
朝らしい食卓だった。焼き魚、漬物、煮物・・・うんうん、これが正しい日本の朝食だ。
でも、何かが足りない。
うーん!?と、うなっているとおばちゃんが何やら湯気がもうもう立っている器を持ってきた。
そうだ!味噌汁がなかったんだ。
でもおばちゃんが運んできたものは、単なる味噌汁ではなかった。
「わっぱ煮」だ。
これは僕等の粟島来島の目的の一つだった。
わっぱという木で作った円筒の器に、焼き魚をいれ味噌をといだ水を入れる。
その中に真っ赤になるくらい焼いた石を数個中にほうり込む。するとあっという間にぐつぐつと煮えたぎってくる。
単純といえば単純だが、豪快そのものの粟島料理である。
「うわっち!!」
当たり前の話だが、熱い。味なんて最初の内は全然分からない。
熱い石が中に入っているので簡単には冷めないのだ。
でも、慣れてくるとこれが旨い。
味噌がちょっと足りない気がしたがこれでいいのだ。
朝から豪華な食事を楽しんでしまった。
出船までの間、周辺を散歩する。
何もない。
あるのは、海と山だけだ。
潮を含んだ風が海から吹いてくる。
ちょっと強めだ。
天気がいくぶん怪しい。
雨でも降らなきゃいいけど・・・
民宿に帰ると、民宿のおじちゃんが軽トラックに竿やリールを積み込んでいた。
「どーれ、そろそろ行くかね。トラックには3人乗れないから、奥さんは助手席であんちゃんは荷台に乗ってくれや」
ということになって、僕は荷台に乗り込んだ。
「発車オーライ」(古い言葉だな)
僕等を乗せた軽トラックは内浦の漁港を目指した。
狭い島内の、これまた狭い道をぐるぐる曲がりながらトラックが走る。
荷台の釣り道具は、固定されているわけではないから曲がるたびに飛び出しそうになる
。
落ちそうになる釣り道具を必死にささえる僕の仕事も大変なのだ。
やっと漁港に着き、民宿の所有する船に乗り込む。
釣り舟は普通、真ん中に操縦室があり、それを左右から挟むように船の舳先から艫(とも)に向かって座席が有るが、この船は本当の漁船なので腰をかける場所がない。
しょうがないので釣竿を船の中にゴロンとおき、手近な物をつかむ。
「ブロロロロン・・」
ディーゼルエンジン独特の音を立てて船が動き出す。
始まったのだ。あの悪夢のような釣りのはじまりだ・・・・
(つづく)
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