【想い出釣行記】第十五話 落ちハゼ狂想曲

2011年10月03日 19:39

約1年ぶりの想い出釣行記です。

いや〜久しぶりだなぁ・・・。

エリアではこれからがシーズンインですが、汽水域・沿岸では落ちハゼが晩秋までのピークになります。

夏の間小さかったハゼが、秋が深まることにはたくましくなって海に出ていきます。

それを仕留めるためによく釣りに行ったものでした。

私は市川市の行徳に住んでいたので、近くに行徳漁港がありました。

ここは、秋になるとたくさんの釣り人でいっぱいになります。

釣り人だけではありませんよ〜。

ほら、昔の私がびっくりしているところから始まる今回の想い出釣行記。

お時間のある方、ゆっくりとお楽しみください。
「なんだこりゃぁ!?」

僕は思わず奇声をあげてしまった。
目の前には、なんと釣り舟が20隻くらいならんでいる。
僕がたっているのは釣り舟の停泊場ではなく市川市行徳の東京湾にそった路上である。
カミサンと2人で秋の落ちハゼを釣りに来たのだが、何とポイントと思われる目の前の海には同じ獲物を狙った釣り舟が船縁をくっつけるほど寄り添いならんでいるのであった。

日曜日の午後と言う事もあってか、親子連れのにわか釣り師がわんさか集まっている。
隣の人との距離は2メートルも開いていない(まるでどこかの管理釣り場と同じである)
ましてや目の前の海50メートル先には、釣り船がならんでいるのである。

投げ釣りをしようとしてきたが、これはよほどコントロールが良くないと隣の人とオマツリをするかもしれないし、ましてや飛ばしすぎようモンなら錘(おもり)が釣り舟を直撃し、
「釣り人、錘の直撃で即死」
なんて記事が翌朝の新聞にデカデカ載らないとも限らないのある。

僕は一応近距離ならば、狙ったポイントの近くには仕掛けを飛ばすことが出来るが、ヤバイのはウチのカミサンである。
彼女は、投げ釣りのことを「とりゃとりゃとーりゃ」と呼ぶ。
これは彼女が投げるときに「とりゃ」といいながら投げるので何時の間にかそう呼ぶようになってしまったからである。

仕掛けを投入するのにテクニックが必要なことから、僕は自分がポイントめがけて投げた後、カミサンの仕掛けも投入してあげるつもりだった。
ところが、僕が投げた直後、
「とりゃ!」
と、例の気合いが聞こえたと思ったら、シュルシュルと伸びた仕掛けは右隣4,5人分の仕掛けを飛び越えていってしまった。

「あちゃ〜」

僕は彼女が投げた仕掛けと交差してしまった人に「すいません、すいません」と謝りながら仕掛けを回収した。
回収した仕掛けにはもう体調12cmを越した落ちハゼがついていた。
魚影は思ったより相当濃そうであった。

地下鉄東西線「妙典駅」と隣の「原木中山駅」の間には江戸川の放水路がある。
ここは関東でも有数のハゼ釣りのメッカとして有名な所で、スポーツ新聞や釣り新聞などでも紹介され、夏の最盛期には手こぎボートが川を占領するようになる。

僕は毎年、缶ビール半ダースを仕入れ飲みながらボートでハゼを釣るのが好きだった。
落ちハゼは、秋になり成長したハゼが河口から海へ下ったものを呼ぶ。
この頃になると、天ぷらで食べてもおいしい大きさに成長している。
このハゼの天ぷらが僕はとっても好きで、これまたとっても好きなビールのお供にちょうどよく、とっても幸せな気分になるのであった。

さてさて、その日のハゼ君はカミサンの方にお愛想を使っているようで、隣で釣っている僕には一向にご無沙汰であった。
餌の付け替えや、魚を外すのは専ら僕の仕事なのでなんとなく不機嫌になっていた。
ところが、その時僕の竿がコクンコクンとお辞儀をしているではないか。

「よっしゃ、よっしゃ」

昔の日本の総理大臣のような言葉を発しつつダイワのリールをカリカリと巻く。
釣れたのはハゼにあらず。セイゴであった。
「ま、とりあえずセイゴはスズキの子供なんだかんな。スズキは60cmにもなるでっかい魚なんだかんな」
と、ちょっとだけカミサンに自慢しつつ一応キープした。

隣ではカミサンが本命を何匹か釣っている。
またしばらくボーッとしていた僕の竿に第2段のあたり。ふたたび

「よっしゃ、よっしゃ」


と巻き上げると今度は20cmくらいのマゴチであった。
どうも、喜んでいいんだか悪いんだか分からない外道のオンパレードだ。
「ま、一応マゴチだかんな。魚屋ではメゴチより格段値段がいいんだかんな」
という僕のいいわけもきかぬまま

「とりゃ!」

と、さっきよりもぜんぜんいいコントロールでカミサンがキャストする。

僕の竿に第3段のあたり。
今度は重い!
これはもしかすると大物かもしれない。
期待に胸を膨らませながら釣り上がったのは、なんと渡り蟹であった・・・

その夜の食卓には10匹ほどのハゼの天ぷらとセイゴとマゴチの塩焼き、渡り蟹の味噌汁、そして大好きなビールが上がっていた。

「ハゼだけじゃこんなに豪華にならなかったんだかんな。」

といいつつ僕は渡り蟹の味噌汁をズズッとすすった。

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