【想い出釣行記】第八話 竿は安くても・・・(いしもち釣り編)

2010年02月04日 12:47

最近は管釣りばかりですが、20年位前(って書くとがっくりするなぁ)は千葉の行徳に住んでいたこともあり、しょっちゅう船釣りに行っていました。

今回、久しぶりの「想い出釣行記」はこの季節に合ったものをチョイスしてみました。

この「想い出釣行記」は記事を書いたのが10数年前なので、文体が今と全然違いますが(昔のほうがいいか)・・・

お時間のある時の暇つぶしにご覧ください。





(写真は「食材辞典」さんから拝借しました)
突然だが、僕は高い釣竿を持っていない。
海の船竿はつい最近新しいのを買ったが、それまでは中学生の頃買った1200円のセット物(竿、リール、仕掛けがセットになっている)を使っていた。
今回の話は、その安い釣竿を持って厳冬の海に繰り出した話である。

今朝の気温は多分氷点下だろう。車のフロントガラスにビッシリ霜が降りている。
ドアを開けるとバリバリ氷が剥がれ落ちる音がする。
僕は寒さに震えながらも、愛用の1200円竿をトランクに入れた。
リールはさすがに安いながらも新しいものを使っているが、竿は10年以上も同じ物を使っている。
お金が無くて買えないのも事実だが、愛着があって手放せないのも事実なのだ。

地元の居酒屋で知り合ったシミズというサラリーマンと待ち合わせた浦安の船宿へ向かった。
僕の車は(今は違うが)10万円で買った中古のホンダシビック(クリーンエンジンCVCCの頃)なのだが、「シビちゃん」という愛称で呼んでいた。
ところが、巷ではあまりのボロさに「ボロック」と呼ばれていた。非常に遺憾である。
これもまた愛着があって手放せないものの一つだ。(うそつけ、貧乏なだけだろう (~_~;))
ボロックを・・・いやいやシビちゃんを船宿の駐車場に停めると、店の前には寒さを「へ」とも思わない釣り○チどもでひしめいている。
僕は堂々と1200円竿をトランクから取り出し船の中へ入って行った。

すでに、船の中にはシミズ氏が乗り込んでいて僕の分まで場所を確保してくれていた。
「いやぁ今日は寒いねぇ。冷えるねぇ。こんな寒さではお魚チャンも凍っているんじゃないかねぇ」
と、訳の分からない事を言いながら「熱燗娘」を飲んでいた。
このシミズ氏、非常に怪しい人物である。
何が怪しいかというと顔が怪しい。
どういうふうに怪しいかというと・・・んーと、色男風なのである。
なぜ色男が怪しいかというと・・・んーと・・・話が長くなるので元に戻そう。

対象魚は「いしもち」だ。
「いしもち」という魚は、えらのあたりに石を持っている事が語源だそうだ。

船は、僕と「怪しげシミズ氏」と他10人を乗せて東京湾に出る。
さすがに船べりにはいられなくなり船倉へ移るが、船倉は5人も入ればいっぱいになる。
そこに10数人のおやじ釣り師が入っているのだから非常に窮屈なのだ。
さらにまた皆が煙草を吸うもんだから、船倉内はさながら火事場のようになってしまうのだ。

ロータリーエンジンの回転音がだんだん落ちてくる。ポイント付近についたのだ。
ポイントは羽田空港沖。目の前に羽田飛行場が見える。
離陸したのか、着陸するのか頭上では飛行機が旋回している。
そんな光景を見ながら1200円竿に仕掛けをセットした。
一応1200円竿は20号のオモリまで耐えられるようになっている。
水深は15m前後だから、十分だろうとふんでいたら、
「今日は潮流が早いから30号のオモリでやって」
と、船長の言葉。
「冗談じゃない。30号のオモリなんて持ってないよ。」
ぶつぶつ言っていると船長が
「兄ちゃん、オモリが無かったらあげるよ。でも、その竿だったら貸し竿の方がいい竿だよ」
とのありがたいお言葉。
「大丈夫、大丈夫。オモリさえあれば何とかなるから」
といいながらも、
(いいもんな。この竿だって、いままでフッコやマゴチや大物釣ってんだかんな。30号のオモリごとき何とかなるケン)
と、ちょっと言い分けしてしてみた。
とはいいながらもいざ30号のオモリをぶら下げてみると、あらまあ、竿はまるで大物を釣ったみたいな満月状態になっている。
なんてこったい。まあいいさ。餌の青いそめをちょんがけにして船下に投入する。

気温がなかなか上がらない。
知らぬ間に出た鼻水が固まっている。(チャット大袈裟か)
ティッシュを取り出そうとした瞬間、竿先にガツンと来た。
バシッとあわせると、重々しい引きを感じる。
竿はいっそう満月にたわみながら苦しそうにギシギシしなり出した。

「シミズさん、きたよ」
というと、
「いやぁ、こっちもきたよぉ」
といいながら、軽やかにリーリングしている。
僕は密かに
「俺の方が大物だかんな」
とにやにやしながら、重い引きをかわしながら取り込んだ。
「怪しげシミズ氏」も同時に取り込んだら、釣り上げたいしもちが「グ〜」と泣いた。

僕のいしもちは25cm。「怪しげシミズ氏」のいしもちは30cmをはるかに超していた。
「怪しげシミズ氏」の道具をよくよく見てみれば、Oh my GOD!ダイワ製の超高級船竿ではないか。
リールにしても、そんじょそこらのリールが土下座するようなベリーワンダフルである。
「シミズさん、その道具、なんぼ?」
「いやぁ、安モンさぁ。10万円くらいかな・・・」
バキッ!と心の中でストレートパンチを食らわす。
「いやぁ、道糸も新素材だぁよ」
バキッ!ドカッ!と、ストレートとカカト落としの2段攻撃をしてやった。

いざ釣り終えてみると、当日の釣果は僕が20匹、「怪しげシミズ氏」が30匹で僕の完敗に終わった。
「腕じゃないかんな。道具の差だかんな」
と、椎名誠的文体をもって言い訳をする。

でも、実際、いしもち20匹というのはえらい数で塩焼き、刺し身、酢じめ、煮つけとあらゆる料理法をもってしても食べ尽くすのに1週間はかかった。

そういえば、あれからもう何年もたつけど、いしもちは食べていないなぁ。
「怪しげシミズ氏」は何故か行き付けの飲み屋からも姿を消してしまったし・・・

また行こうかな。
今度は新しい竿を持って・・・

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