【想い出釣行記】第五話 サクラマスの噂

2009年08月31日 15:27

昼飯は北町食堂のカレーラーメンを食べた。


このこってりして旨いラーメンが500円前後で食べられるのは非常にうれしい。
カレーがしっかりきいているのでけっこう辛いし、なによりも熱い。
ハネるのが欠点だけどお気に入りなんだな、これが。
満足しながら帰宅し、弟のルアーセットとウェーダーを持ち出す。
昨日フライで悔しい思いをした分今日はルアーで取り戻してやるのだ。

昨日弟と鮭川へ釣行した時は、夕まづめのサンセットライズにサクラマスを狙った。
ここは30cmほどのサクラマスがいるといわれている。
ところが川の状態が悪いのか、ボクの腕がわるいのか(多分後者であるが)全然釣れない。
釣れてくるのは、5cmほどのニガ(あぶらはや)だけだ。
サクラマスの件は多分噂に過ぎないのだろうということにして納竿した。
二人でザブザブと川を渡り始めた時に背後でライズの音がした。
振り向くと30cmはあるだろう魚のシルエットがライズしている。
あわてて釣ろうと思っても時既に遅し。
夕まづめはすでに夜へと移り変わっていた。
リベンジ。
まさしく今のボクにはこの言葉がぴったりだ。
車のハンドルを持つ手が震える。砂利道を走っているからだ。
いよいよ、昨日のポイントが見えてくる。
「あ・・・」
先行者がいる。しかも親子連れでファミリーフィッシングときてやがる。
まぁ釣りは親子のふれあいの場としては最高だとボクも思っているが、時と場合によるってば・・・
小学校1年生くらいの少年が釣りに飽きたのか、川に石を投げている。
そこがまさしく昨日ライズしたポイントだ。ちくしょう!
とりあえずウェーダーに履き替えて、向こう岸から狙うために川を渡る。

川上から斜め川下にめがけてキャストする。
空振り。
ポイントと思しきあたりをひたすらせめる。
空振り。
いいんだ。勝負は夕まづめだ。
途中ハヤが釣れたりするがリリース。

親子連れもいなくなりあたりは夕まづめ独特の雰囲気に包まれる。
夕焼け色をした空に、少しだけ寒気を含んだ風が吹き抜ける。
まだライズはない。

夕まづめも終りに近づく。
やはりリベンジならずか・・・
今度は川上へキャストする。川の流れにルアーが翻弄され勢い川下へ流れていく。
その時!
ガキ!
石を噛んだのだろうか・・・
グングン!!
ロッドがたわむ。
ヒットだ!!!
思いきりあわせると獲物は川下に向かって走っていく。
川相に会わせて下っていく。
途中石に足をとられ転びそうになるが、しっかりとこらえる。
心臓は高鳴り、ロッドを持つ手が震える。緊張のためだ。
おしっこをしたくなるがそんな場合ではない。

数分後、ボクの手の中には35cmクラスのレインボートラウトがいた。
サクラマスではなかったが十分に楽しませてくれた。
周りは夜の帳がおりかけている・・・

鼓動の高鳴りは一向に収まらないまま、ボクは再度川を渡った。
ズル!
転倒。さほど大きな川ではないから大丈夫だろうとたかをくくったが、ウェーダーから入りこむ水流がものすごく、あっという間に流されていく。
真剣にやばいと思った。右手にはロッド。左手には魚。手がふさがっているが、どちらもロストしたくない。
左手にロッドと魚を両方持った時、大きな石に腰を打ちつけた。痛!
だがその時からだの向きが変わって、木の枝が目の前に現れた。
右手でしっかりつかむ。

やっとの思いで車に戻った時にはずぶぬれになっていた。
かろうじてロッドと魚をロストしなかったものの、もしあの大きな石にぶつかったのが腰じゃなくて頭だったら・・・
後悔した。魚を捨てていればもっと早く助かったかもしれなかったのに・・・
でも、よかった・・・命の大切さを確認した一時だった。

その後ずぶぬれになったボクは、とりあえずパンツだけはいた間抜けな格好で車に乗った。
初秋の風が吹いているので、外は寒いだろうな。
こんな日は釣れた魚をバター焼きにして、熱燗でも呑むか・・・
明日の昼はまたカレーラーメンでも食うかな、今度は大盛りだ。
ホントに後悔しているのかな、おいらは・・・

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